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登山再開に向けてのガイドライン改訂版

令和4年11月22日
初版 令和2年6月10日

公益社団法人 日本山岳・スポーツクライミング協会
登山医科学委員会

はじめに

 令和2年5月25日に政府が新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大に伴う緊急事態宣言全面解除を発表しました。これに伴い同日に山岳四団体より「山岳スポーツ愛好者の皆様へ」という声明文が発出されました。この中には山岳スポーツ再開に向けて基本的なガイドライン(指針)も含まれていました。弊協会登山医科学委員会としては、医学的な観点からさらに詳細な「登山再開に向けてのガイドライン」を令和2年6月に作成いたしました。。
 その後おおよそ2年にわたり、COVID-19を引き起こすウイルス株が変化しながら感染拡大が収束しない状況が続きました。しかし、令和4年1月からの第6波が収束してきた5月23日に変更された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」により、マスク着用の条件が緩和されましたが、会話をしなければ屋外でマスクを外して良いとの方針が明確になりました。さらに第6波および第7波を引き起こしたオミクロン株の解析から、ウイルス陽性者・濃厚接触者の療養・待機期間が徐々に短縮されてきています。9月7日以降、陽性有症状者:発症日から7日経過し、かつ、症状軽快から24時間経過するまで、陽性無症状者;検体採取日から7日間(5日目に陰性確認できれば5日間)、濃厚接触者;接触日から5日間(陰性確認による短縮可能)、となりました。
 また、7月からの第7波では緊急事態宣言が出されず、感染が拡大する中で社会経済活動が行われました。結果として、いつくかの山小屋では従業員に感染が拡がり、一時的に閉設せざるを得ない状況となりました。理想と現実の間にギャップがあり、緩和による影響を受ける人・施設があり、その状況を両者が許容しながら登山を楽しんでいただいているのが現状であります。
 ただし、医学が発展したとはいえ、COVID-19感染症で確定的に分かっていることは、原因となるウイルスに関することが主で、未だに治療法も予防法も確立されていません。ワクチンが開発され、有効であることが証明されてはいますが、ワクチン接種後に罹る人もおり、全員に発症予防を約束できるものではありません。また、治療薬も出てきましたが、その使用に同意書が必要であり、その他の薬と同様には使えません。そのため、「3密」(密閉・密集・密接)回避という方法が提唱され、未だに皆様に実践いただいているところであります。
 登山を再開する登山愛好者の方は、このガイドラインを参考にしていただき登山仲間や山岳事業関係者への感染拡大を防ぐ活動にご協力いただければ幸いです。

A. 登山計画とアプローチ
  1.  長期間の登山自粛により予想以上に体力が低下しているかもしれません。歩行時間の短いハイキング、里山の登山など負担の少ない活動から始め、自分の体力を確認するようにしましょう。
  2.  山域を管轄する自治体の移動制限等の情報及び登山口までの公共交通機関の運行状況を事前に確認しましょう。COVID-19感染拡大に伴い公共交通機関の運行が中止になっていることがあります。また、公共交通機関が混雑する際には感染のリスクが高まります。自家用車の乗り入れが可能であれば自家用車でのアプローチも考慮しましょう。
  3.  自家用車の際には車内は「3密」になりやすいので登山仲間との乗り合いは最小限にしましょう。移動中にはマスク着用、窓を開ける等の換気、トイレなどで共有設備を触れる前後には手指消毒を心がけましょう。
  4.  山小屋やテント場を利用する際には事前に管理者に連絡し、運営状況を確認しましょう。通常営業とは異なり、閉鎖していることがあります。小屋を予約する際には、感染拡大防止のためのルールがあるのか確認してください。
B. 登山前の体調管理
  1.  COVID-19の潜伏期はオミクロン株ではそれまでの株の1~14日間から2日程度短縮され、暴露から3日程度で発症することが多いとされています。症状としては発熱、呼吸器症状(咳)、頭痛、倦怠感、咽頭痛がみられます。そして、症状からCOVID-19と感冒を区別することは困難です。
  2.  以下に該当する方は登山を避けましょう。自分の体調の異常に早く気付くために、日頃からご自身の体温測定、健康チェックをするようにしましょう。

    ア 平熱を超える発熱
    イ 咳(せき)、のどの痛みなど風邪の症状
    ウ だるさ(倦怠感)、息苦しさ(呼吸困難)
    エ 嗅覚や味覚の異常
    オ 体が重く感じる、疲れやすい等
    カ COVID-19感染症陽性とされた者との濃厚接触がある場合
    キ 同居家族や身近な知人に感染が疑われる方がいる場合
    ク 過去5日以内に政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国、地域等への渡航歴又は当該在住者との濃厚接触がある場合
C. 登山メンバー
  1.  メンバー数は登山道や休憩場所で密集・密接を避けるために少人数を推奨します。フィジカルディスタンスは2m以上、余裕のある間隔を保ちましょう。
  2.  リーダーを決めましょう。
  3.  リーダーはメンバーがB-2のア~クに該当しないことを行動前に確認しましょう。
  4.  単独行の際には自身の体調に異変を感じた時には登山継続を断念し下山してください。
D. 登山中の感染防止・体調管理
  1.  行動中は周囲の人と2m以上を空けること。運動強度が強い場合は吐く息が激しくなるため、より一層距離 を空ける必要があります。ただし、登山道のカーブなどでお互いに見えなくなるような場所では必ず後続者を目視してから先に進んでください。
  2.  マスクは周囲の人に感染させないために状況に応じて着用しましょう。会話する際には必要ですが、行動中に息苦しさや暑さを感じる際には外しましょう。
    また、ほとんど会話をしない場合は近くに人がいても着用する必要はありません。
  3.  飲食時には 周囲の人となるべく距離をとって、対面を避け同じ方向を向いて、会話は控えめにすること。飲み物の回し飲み、食べ物の授受・共有はやめましょう。個包装のものなど、素手で触れずに食べられる行動食は衛生的です。
  4.  山では石鹸による手洗いが難しいためアルコール消毒液を持参し以下の際に使用しましょう。
    ア 共有部分に触れた後
    イ 食事の前
    ウ トイレの後
    エ 小屋への出入り時
  5.  リーダーは行動中の全員の体調に注意し、体調不良のメンバーが出た際にはCOVID-19感染症を念頭において手当てしましょう。特に発熱や呼吸器症状がみられる時には速やかに下山してください。その際にはメンバー全員で行動し、傷病者に接触するメンバーはマスクと手袋を着用しましょう。
  6.  具合の悪い登山者に出会った際にもマスクや使い捨て手袋を着用し、できれば2m距離を空けて声をかけ、必要と判断されれば救助を要請しましょう。
  7.  救助活動では救助する側もCOVID-19感染対策が必要となりますので、自力下山可能であれば救助要請は控えていただきたいと思います。ただし、コースタイムの2倍程度まで時間を要する場合は、救助要請も止むを得ないと考えます。
E. 感染防止のための装備

1. 日帰り
マスク(予備も)、アルコール消毒液※、クロス(消毒剤含侵用)、体温計(接触型)、使い捨て手袋(予備も)、密閉(ジップロック付)ビニール袋、ゴミ袋、携帯トイレ
※手指消毒には60%以上、モノ表面消毒には70%以上が推奨されています。

2. 小屋宿泊
寝袋(小屋に毛布がある際にも持参)、マスク(多めに)

そのほか発症者が出た際に便利なもの
予備食、コンロ、ツエルト、経口補水液粉末、ココヘリ、携帯電話予備バッテリー

おわりに

以上、登山の流れに沿って注意点を記載しましたが、COVID-19感染について強調したい点は以下の通りです。

・無症状でも感染していて他の人に感染させる可能性がある。
・急激に悪化することがある。
・山中で症状が出現した場合、搬送に時間がかかり、さらに救助に関わる人へ感染させるリスクが高くなる。
・オミクロン株では重症化リスクが低いと言われることがありますが、感染力が非常に高く、重症化しなくても出勤での仕事を継続できない人が多くなってしまうため、社会経済活動継続に支障を来すことがある(山小屋の営業自粛、病院の病棟閉鎖、プロスポーツの試合中止など)。

 登山者自身が今までの登山とは異なり、常に感染予防が必要であることを意識する新たな登山スタイルを心がけましょう。
「山は逃げません」ので段階を経ながら安全登山をお願いいたします。


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